辻凌志朗さん

つじ・りょうしろう

俳優。ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン(20152017)、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』(2018)に出演。舞台『Like A』(20182019)で主演を務める。その他、映画『DINER ダイナー』(2019)、ドラマ『ショムニ』(2013,フジテレビ)、『東京独身男子』(2020,テレビ朝日)、『半沢直樹』(2020,TBS)、『私刑人〜正義の証明』(2020,テレビ朝日)などに出演。

美術検定2級取得。趣味は美術館巡り。特技はサッカー、持久走、3オクターブの声域。

 

 

 

 

Q1 美術検定を受験しようと思ったきっかけをお聞かせください。

 

大学では美術史を専攻していたんです。卒業後に将来の職業として美術関係の道も考えるほどだったんですが、縁あって俳優という職業に就くことになって、それ以降は美術は趣味として楽しんでいました。ただ、趣味で終わらせたくない思いもあって、美術の検定試験がないか調べてみたところ、見つかったのがまさに「美術検定」でした。公式サイトにあった3級の問題集を試しに解いてみたら手応えを感じたので、3級から挑戦することにしました。

 

 

 

Q2  大学で美術史を学ぼうと思ったきっかけはなんでしょうか。また、好きな作品を教えてください。

 

高校3年生の時に学校の校外学習で行った、オディロン・ルドンの展覧会に大きな衝撃を受けました。高校まではサッカーに打ち込んでいて、全然美術に関心があるようなタイプではなかったんです。恥ずかしながら、美術展に行ったのはそれが初めてでした。しかしそこで、どこか不気味な印象のあるルドンの絵画や、美術館という研ぎ澄まされた空間に、もうビビッときてしまって。その一日をきっかけにすっかり美術に引き込まれていったんです。それから、もっと美術を学んでみたいと思うようになりました。

 

卒業論文ではフェルメールを選んだのですが、やはりフェルメールには、思い入れがありますね。大学に入りいろいろな作品に触れましたが、フェルメールの作品は一目惚れでした。「数秒前に何が起こっていたんだろう」とか「人物は何を話しているんだろう」と思うような、想像力を掻き立てるような作品が多く、ストーリー性の豊かさに惹かれました。

それから、クールベやミレーなど写実主義の作家も好きです。ありのままの現実を伝えようとした絵画からは、本当にその当時の状況がわかる気がして。貧しかったり、悲惨だったり、幸せとは言えない姿で描かれたものも多いですが、そうした人物の表現に人間味を感じます。

 

 

 

Q3 美術を学ばれたことで、プライベートやお仕事に変化や影響はありましたか。

 

それはすごくありますね。美術を学んだことは、自分の人生において、新しい世界が一つ広がったようなインパクトがありました。作品を通して、ここにはない世界を感じることが好きなんです。例えば、実際に中世ヨーロッパにタイムスリップすることはできませんが、16世紀の西洋絵画を前にして想像を膨らませ、絵画の世界を擬似体験することはできます。絵画に描かれている風景が見たいと、実際に海外に行ったこともあります。そんな風に一気に視野が広がりました。

 

役者の仕事にとっても、プラスになっていると思います。感性が磨かれ、様々な視点を持てるようになると、芝居にも厚みがでます。舞台設定がファンタジーの場合、役や空間を思い浮かべるのが難しかったりするのですが、そういう時は絵画で見た風景や人物が助けになります。頭に浮かんだ具体的な絵画を参考に、空間を想像し、役を作り上げます。これからも、もっと作品を見てひきだしを増やしていきたいです。

 

 

 

Q4  美術検定にむけてどんな勉強をされましたか。また、これから受験される方におすすめの勉強法があれば教えてください。

 

大学では西洋美術史の専攻で日本美術は馴染みがなかったこともあり、試験のためにしっかり勉強しました。美術検定をきっかけに学ぶ機会を得られてよかったです。やはり日本美術も歴史的な背景をわかってから作品に触れると、より深く見ることができると実感しました。

 

試験対策としてはとにかく作品名を覚えること。そして時代背景をしっかり押さえることが大切です。問題集には、必ず出題されるような問題が掲載されているので解いておいた方がいいと思います。また、N H Kで放映されている日曜美術館』も見るようにしていました。

 

あと、美術がテーマの小説を読むのもおすすめです。最近ですと、原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』という本を読みましたが、まさにピカソの生きた時代が描かれた作品で、作品の見方が変わりました。小説などを通して親しみが湧くと、勉強へのハードルが下がり、集中して取り組めるようになるのではないでしょうか。

 

 

 

Q5 美術館での3密対策など、美術鑑賞の環境も変わりつつあります。今どのように美術を楽しんでいらっしゃいますか。

 

InstagramIGTVで「One day Art」という、1日1名画を紹介するチャンネルを始めました。コロナ禍での外出自粛期間中に、自分にできることで少しでも誰かの楽しみになれば、と始めた取り組みです。絵の下調べも動画の編集も、全て自分1人でやっています。美術は敷居が高く思われがちです。ですが、服や家具を人それぞれの価値観で選ぶように、美術もそれぞれの価値観で見ていいと思うんです。美術がもっと身近になって、例えばデートで美術館に行こう、という声が少しでも増えたらいいなと思っています。

 

 

※本インタビューは2020年9月に収録されたものです。

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